◆生誕の地での初フォーラムを終えて◆
○・・・ 尾崎翠フォーラムは第2ラウンド目に入り、第11回
目の今年は翠生誕の地・岩美町で初開催となりました。岩
美町長の榎本武利さんが陣頭指揮で支援して下さり、同町
提供のバス2台と遊覧船による「尾崎翠と浦富海岸ジオパ
ーク・ツアー」も、快晴に恵まれて好評。地元のいわみコーラ
スとはねそ踊りで幕を開けたフォーラムは、 会場の岩美町
中央公民館が満席で溢れるほどの盛況でした。
○・・・ 兵庫県豊岡市の出身で日本海を望む岩美町大羽根
にアトリエを構える美術作家、KEiKO・萬桂さんの講演「『第
七官界彷徨』の挿絵を描いて」は、 同じ山陰の風土で活動
し、共通する資質を持った画家の心眼を通して、レトロにし
てウルトラ・モダーンな作品の特徴を浮き彫りにする内容だ
ったと思います。
○・・・
津原泰水さんの講演「琉璃玉から第七官界へ」は、
尾崎翠の「琉璃玉の耳輪」が滝沢馬琴の「南総里見八犬伝」
を下敷きにしているとの発見を導きの糸に、「第七官界彷徨」
の読みにも及ぶ興味深い内容で、期待にたがわぬ近年の新
たな読みでした。一定の仮説を立て、それを裏付ける証拠を
挙げて論証するのは、科学の方法でもありますが、わたしは
文学の方法的な読みにも当てはまると考えています。
○・・・ 津原泰水さんやKEiKO・萬桂さんの講演を聴いて、浜
野佐知監督が「尾崎翠が新しい世界に飛び立とうとしている」
との感想を抱いたのもうなづけます。川崎賢子さんが尾崎翠
と安部公房を結ぶ線を見つけたのも、久し振りに興奮させら
れる発見でした。フォーラムでは時間の関係でくわしくうかが
えませんでしたが、この問題は今後さらに探究してほしく思い
ます。
○・・・
今年のフォーラムに一通の電報が舞い込みました。見
ると、それは弔電の封筒に入っており、
発信者は「上落合尾
崎翠研究グループ」となっていました。
大人げない嫌がらせだ
なと思っていたところ、 9月になってこんどは尾崎翠フォーラ
ム実行委員会に、
慰謝料100万円を請求する文書が届きま
した。発信者は「稲垣真美代理人」を名乗る2人の弁護士から
です。
本フォーラム・ホームページに掲載した尾崎翠書簡流
出の報告が「名誉毀損」に当たる、
というのですから「省みて
他を言う」体の言説で、呆れてものが言えません。この文書
への回答もホームページに出していますので、 ご覧下さい
。
世間では借りたものを返さないのを、ネコババというのではな
いでしょうか。
(2011年10月30日、土井淑平記)
◆7/10 翠の生誕の地・岩美に集う◆
○・・・ 尾崎翠フォーラムは今年いわば第2ラウンドに入り、
第11回目のフォーラムを尾崎翠の生誕の地・岩美町で開
催することになりました。岩美町の浦富海岸を含む山陰海
岸が世界ジオパークに認定されたばかりで、尾崎翠の文学
と風土に肌で触れる得難い機会です。
尾崎翠は3歳まで岩美町岩井の西法寺で育ち、父親の転
勤に伴って鳥取市に移ったあと、大岩小学校の代用教員と
して17歳から20歳まで網代の僧堂で暮らしました。その岩
美町での初開催はフォーラムにとっても記念すべきイベント
になるでしょう。
○・・・フォーラムは岩美町での開催を記念して、地元のいわ
みコーラスと牧谷のはねそ踊り保存会による民俗芸能の公
演で幕を開けます。 いわみコーラスは好評だった昨年の第
10回大会に続く出演です。牧谷のはねそ踊りは尾崎翠の初
期作品の背景をなす山陰の漁村の伝承文化をしのばせる盆
踊りです。
これに続いて、
山陰海岸を臨む岩美町大羽尾にアトリエを
構える美術作家のKEiKО・萬桂さんに、講演
「『第七官界彷
徨』 の挿絵を描いて」 をお願いしました。
萬桂さんは日本海
新聞の復刻連載の挿絵を担当され、 原画展ともども大変好
評でしたが、
作品制作のパーフォーマンスのビデオも交えて、
翠の世界を探求する書家の語りが楽しみです。
○・・・休憩をはさんで、尾崎翠の映画脚本「琉璃玉の耳輪」
を現代によみがえらせた探偵小説『琉璃玉の耳輪』によって、
新たな翠ブームに火をつけた幻想作家の津原泰水さんの講
演「琉璃玉から第七官界へ」 を聴きます。 当代の幻想文学
の旗手にして尾崎翠の読み手でもある 津原さんの講演は、
多くの読者や聴衆を惹きつけるに違いありません。尾崎翠
の原作についての新解釈も用意されているとうかがっていま
す。
このあと、参加者より翠へのメッセージを寄せていただき、
ゲストのサイン会でフォーラムを終えますが、フォーラム開催
日の7月10日より16日まで、会場の岩美町公民館でKEiK
О・萬桂さんの挿絵原画展を同時開催しますので、ぜひお越
し下さい。
(2011年4月14日、土井淑平記)